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課題解決力と課題設定力

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 社会において、特に企業の採用現場や人材育成の場では、良く「課題解決力」という言葉を耳にする。その意味は、文字通り様々なシチュエーションにおける多種多様な問題に対応して、目的達成のための課題を解決する能力のことである。そして、多くの企業でこの課題解決力が重要視されており、ほぼ必ずと言って良いほど、企業の人事研修等のカリキュラムにこの課題解決力育成に関するものが設定されている。そして、それだけではなく、数多くの書籍や自己啓発セミナーなどにおいても、課題解決力というキーワードを目にすることができる。

 もちろん、課題解決力は極めて重要なスキルの一つである。研究開発の現場のみならず、企業や社会のあらゆる場面では、様々な課題に対峙し、当然ながらその課題を解決することを要求される。一般には、そうやって課題を解決していくことが出来なければ進歩、発展は成しえないとさえ考えられている。

 一般的には、ほとんどの企業ではチームとして種々の課題や目標の達成が要求される。チームとして一つ一つの課題解決を進めていくことで目的を達成する、そのためには、個々のメンバーが与えられた課題をそれぞれが解決していかなければならない。特に、入社数年の間は担当者として細分化された役割の中で、一要素である課題の解決に努力することになり、そのための課題解決力が求められる。

 しかし、現実に目をやると、新卒程度の課題解決力では役に立たないと言わざるを得ない。これは、知識が足りないことが原因の一つであるが、社会において求められる課題解決の経験が足りないためにどのように対処すれば良いかが分からないということも重要な原因としてあげられる。そのために多くの企業で多大なコストと時間をかけて、人材育成の名の下に人事研修の中で課題解決力の教育が行われている。

 もちろん、課題解決力は重要なスキルの一つであり、それだけの時間とコストを投じるだけの価値があることは間違いない。しかし、課題解決力とは文字通り目の前にある、与えられた課題を解決する力であり、言い換えるなら、与えられた命題を解決するためのスキルであると言える。ところが、社会が求めるもの、次の進歩を生むブレークスルーを与えるものは決して課題解決力ではない。本当に必要とされるのは、課題を創造するスキル、すなわち、「課題設定力」こそが真に求められるスキルなのである。何が必要であるのか、何が進歩を生むのかを考え、それを達成するための道筋である課題を見出す、課題解決力の上位にあるものこそ課題設定力なのである。
 しかし、残念ながら今の受験型学習で習得できるのは課題解決力でしかなく、しかも、それは初歩の初歩レベルのものでしかない。新たな理論や技術を生み出すことが期待される大学においてでさえ、教養段階はもちろんのこと、研究室やゼミに配属された後もその実態は、与えられた研究テーマについて調べるだけの課題解決力しか身に付かない状況であると言える。このことは、学部課程だけではなく、修士課程はもちろん、博士課程においても大差ない状況というのが今の日本の大学の実態である。本来は、少なくとも博士課程においては自身でテーマを見つけ出す、または、作り出して、その課題を解決する過程が研究となり、それが博士論文として形になるのである。さらに言うならば、そういった研究テーマがすでに存在しており、その研究を進めたいという目的を持って進むのが博士課程の本来の姿のはずである。しかし、実態は前述のようなものであり、次のステップのための通過点、予備校と同等の位置づけでしか考えていない者も決して少なくない。

 本来大学は、少なくとも卒業年度、できることならば学部教養課程から研究テーマの探索、すなわち、課題設定の訓練を始めるような課程への変革を望みたい。そのようにして、早い段階から出来るだけ長い時間をかけて課題設定力の訓練を行わうことを期待したい。そして、学生諸子も課題解決力の訓練はもちろんのこと、課題設定力を身につけることを念頭において研究活動を行うことを考えてほしい。また、企業においても、目先の成果として現れやすいと勘違いしがちな課題解決力だけを重要視するのではなく、本当に重要な課題設定力の育成にも力を入れていって欲しいものである。

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